母とおじさん
その人はある日突然、私の前に現れました。にこやかな笑顔がとても印象的で、私も兄もその人の事を、「東京のおじさん」と呼んでいました。この東京のおじさんが、いったい何者なのか分からないまま、私たちはずっとおじさんに遊んでもらっていたのです。その時、私たちには父親がいなかったので、おじさんが自分たちの父親のつもりでいたのかもしれません。
東京のおじさんは、我が家へ来る時はいつも何かお土産を持ってきました。だから私はそれが楽しみで、おじさんの顔を見ると喜びを隠せませんでした。ある時はケーキだったり、またある時はフルーツだったりしました。ですから、私は勝手に、東京のおじさんはお金持ちなのだと決めつけていたのですね。
ある日の事でした。東京のおじさんが小さな女の子を連れてきたのです。年は私よりも三つ下の三歳だと言っていました。母は始終、「かわいいね」と連呼して、その子を抱いて離さなかった。母には娘がいなかったので、こんな小さな女の子の扱い方が分からない。だからそうする事しかできなかったのでしょう。